遺産の額が一定の額を超えると相続税がかかる(税務署に申告が必要な)場合があります。遺産(不動産等)の評価の仕方や、誰に取得させるかなどで税額が変わってくることがありますので、特に遺産の額が大きい方は、税理士等の専門家に確認しましょう。ここでは、一般的な相続税額の計算の仕方を、例に当てはめてご紹介いたします。
被相続人には、配偶者と子2人がいます。相続財産総額は7億円、債務等が1億円、生前贈与額は0円であり、配偶者が1/2、子がそれぞれ1/4の割合で取得する場合で考えてみましょう。
相続税額の計算
【1】相続財産総額(注1) | 700,000,000円 |
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【2】債務・公租公課・葬式費用の金額 | 100,000,000円 |
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【3】課税価額(正味相続財産) | 【1】-【2】 | 600,000,000円 |
【4】基礎控除(注2)3,000万円 + 600万円×3 | 68,000,000円 |
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【5】課税遺産総額 | 【3】-【4】 | 532,000,000円 |
【6】相続税(配偶者) 【5】× 1/2 × 45% -2,700万円 | 92,700,000円 |
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【7】相続税(子)(注3)(【5】× 1/4 × 40% - 1,700万円)×2人 |
72,400,000円
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【8】相続税の総額 | 【6】+【7】 | 162,100,000円 |
【9】配偶者の軽減 【8】× 1/2 = 82,550,000円 【8】× 1億6,000万円/【3】= 43,146,666円のどちらか大きい方 |
82,550,000円 |
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【10】贈与税額控除(注4) | 0円 |
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【11】納付税額 【8】-【9】-【10】 |
82,550,000円
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- (注1)相続又は遺贈による取得財産及びみなし相続財産(生命保険金や退職金は、いずれも500万円×法定相続人数を控除した残額のみ算入)等
遺贈とは、遺言による財産の無償譲与のことです。相続人以外の第三者に対してすることもできます。遺贈するときは遺留分を考慮する必要があります。 - (注2)基礎控除 = 定額控除 + 法定相続人比例控除
平成27年1月1日以降の相続 | |
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定額控除 法定相続人比例控除 |
3,000万円 600万円 × 法定相続人数 |
なお、法定相続人の中に被相続人の養子がいる場合には、相続税の総額の計算上、法定相続人の数に算入する養子の数は、原則として【1】被相続人に実子がいる場合には1人、【2】被相続人に実子がいない場合には2人まで。 |
- (注3)税額の速算表(平成27年1月1日以降の相続)
【5】×法定相続分 の金額 | 税率 | 控除額 |
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1,000万円以下 1,000万円超3,000万円以下 3,000万円超5,000万円以下 5,000万円超1億円以下 1億円超2億円以下 2億円超3億円以下 3億円超6億円以下 6億円超 |
10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55% |
なし
50万円 200万円 700万円 1,700万円 2,700万円 4,200万円 7,200万円 |
- (注4)主な税額控除
- 配偶者は取得財産が1億6,000万円又は配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い方まで非課税となる。
- 未成年者控除
6万円×20歳に達するまでの年数(端数切上げ)を控除する。 - 贈与税額控除
相続開始時3年以内の被相続人からの課税贈与財産は相続財産とされるので、その贈与税額を控除する。 - 障害者控除、数次相続控除等。
配偶者や子が、遺産分割協議でもめたり、相続税の納付が負担になるようなことがあったりすると困りますよね?そうならないように、生前に税理士等の専門家に相談して「遺言」の作成、「生前贈与」や財産の運用について考えましょう。
まずは、遺言について考えましょう。
遺言とは、被相続人が生前に相続人や遺産分割方法を指定したい場合や、ある人に贈与したい場合に、自分の意思を表示しておく行為です。
遺言がある場合、相続財産の分割は原則、遺言に従うことになりますので、意思をしっかりと相続人に伝えたい方には遺言を作成することをお薦めいたします。では、遺言はどうやって作ればいいのでしょうか?
遺言の作成方法は法律で定められています。ここでは、代表的な3つの遺言についてご紹介しましょう。
1. 自筆証書遺言
遺言者が、自筆で原則全ての文面を書いて作成するものです。押印や日付の記入など、法律で厳格に要件が定まっており、それらを満たしていない場合は無効となる場合がありますので、司法書士等の専門家にご相談することをお薦めいたします。当事務所においても、ご依頼者様のお話をきちんとお伺いした上で、遺言者の意思が反映された遺言を作成できるようにお手伝いさせていただきます。
簡単な遺言の記載例を載せますのでご参考にご覧ください。
2. 公正証書遺言
遺言者が公証役場で証人2人の立会のもと、公証人の面前で遺言内容を口授し、それに基づいて公証人が文面を作成するものです。原本は公証役場で保管され、正本が遺言者に交付されますので、紛失の恐れがなく安心確実な遺言と言えます。その反面、公証人に手数料(遺産の額によっては数十万円以上)を支払わなくてはならないという負担があります。
3. 秘密証書遺言
ここでは一般的な作成方法をご説明します。
まず、遺言者が、証書(他人に書かせたもの、タイプしたものでも可)に自分で署名押印し、その証書を封筒に封じて、証書に押印した印鑑で封印します。次に、その封筒を公証人1人と証人2人以上の前に提出して、自分の遺言書である旨、その筆者の氏名・住所を述べます。そして、公証人がその証書を提出した日付と遺言者が述べたことを封紙に記載した後に、遺言者と証人がこれに署名押印し、完成です。
法律で作成要件が定められていて煩雑ですが、公正証書遺言に比べて安価(現行11,000円)に作成できるメリットがあります。
遺言作成のコンサルティング
当事務所では、自筆・公正・秘密証書遺言の作成について、ご依頼者様の意思が反映されるようお手伝い致しますので、お気軽にご相談ください。
公正・秘密証書遺言の場合は公証役場での手続がありますが、当事務所で準備・手配致します。
遺言作成コンサルティングの報酬目安 | |
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自筆証書遺言 | 30,000円〜 |
公正証書遺言 | 50,000円〜 |
秘密証書遺言 | 40,000円〜 |
- ※上記金額は、遺産の種類・数等により変動しますので、詳細はお問い合わせください。
- ※公正証書・秘密証書遺言の場合は、当事務所の報酬の他に公証人に支払う費用があります。遺産額等の条件により変動致しますので、公証人から見積額の提示があった段階で具体的な金額をお知らせいたします。
- ※出張・証人手配ご希望の方は、お申し付けください。交通費(実費)、日当(1時間につき3,000円)を別途ご請求いたします。
つぎに、夫婦間・親子間の生前贈与について考えてみましょう。
相続が発生してから慌てて動き始めたのでは、多額の税金を納めることになる場合があります。被相続人の財産を生前に贈与をした方が有利になることがありますので、専門家にご相談ください。当事務所では、独自の税理士とのネットワークを活かし、税理士と相談の上ご依頼者様にとって有利な登記申請ができるようお手伝いいたします。下記に一般的な贈与税の計算式を記載しますので、ご確認ください。また、生前贈与財産については、従来の贈与税の制度に加え、「相続時精算課税制度」が創設されました。これは、受贈者の選択により、贈与時にこの贈与財産に対する贈与税を一旦支払い、その後の相続時に改めて課税し直し、税額を精算する制度です。適用要件は下記の図のとおりですのでご確認ください。
税額 = 基礎控除・配偶者控除後の課税価格 × 税率 - 控除額
贈与税の速算表
平成15年1月1日以降の贈与 | ||
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基礎控除・配偶者控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 200万円超300万円以下 300万円超400万円以下 400万円超600万円以下 600万円超1,000万円以下 1,000万円超1,500万円以下 1,500万円超3,000万円以下 3,000万円超 |
10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55% |
なし
10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円 |
【基礎控除】
110万円(平成12年分以前 60万円)
【配偶者控除】
婚姻期間20年以上の夫婦が居住用不動産やその資金を配偶者に贈与するときは2,000万円(別途不動産取得税がかかります)
※不動産取得資金に係る相続時精算課税制度の特例もあります。
※贈与税の非課税財産、みなし贈与財産に注意しましょう。
※法人からの贈与は所得税の一時所得となります。
適用となる要件は次のとおりです。
1.その年1月1日において60歳以上の親から20歳以上の推定相続人(代襲相続人を含む)に対する贈与であること。
財産の種類、回数、金額に制限はありません。
2.贈与税の申告期限までに相続時精算課税選択届出書を税務署に提出すること。なお、この届出書の撤回はできないので、この制度を選択しようとする場合は充分に検討しましょう。
3.適用要件
贈与者 | 60歳以上の親、祖父母 |
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受贈者 | 20歳以上の推定相続人である子(代襲相続人を含む)及び孫 |
受摘要財産 | 贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はない |
特別控除額 |
2,500万円 (前年までに特別控除額を使用した場合には、2,500万円から 既に使用した特別控除額を控除した残額となる) |
税額の計算 | (贈与財産の価値-特別控除額) × 20% |
- (注1)住宅取得資金については平成21年12月31日までの時限立法